「――祐一さんっ」
俺が目を覚ますと、栞の顔がすぐ近くにあった。
「――栞?」
「よかったです、目を覚ましてくれて――ずっと祐一さん、目を覚まさなかったんですよ」
栞の話によると、一月に栞が倒れてから原因不明の昏睡状態に陥ったらしい。
――もっとも、栞もこのことを医者から聞いたらしいが。
――栞は奇跡的に助かったが、俺が昏睡状態に陥っている、ときいて、退院してまもなくだというのに、毎日俺の看病をしにきてくれていた、とのことだ。
「――ほんとに、悪かった栞」
「いえ、いいんです、祐一さんが元気になってくれたのなら――でも、本当に目覚めてよかったです」
「そんな夢を見ていたんですか――」
病院でちょっとした検査を終え、秋子さんに連絡をいれてから、俺は見ていた夢の話をした。
「ああ――」
俺がそういうと、栞はしばらく考え込んでいった。
「祐一さんはやっぱり強いです」
「――え?」
栞のその言葉に俺は俺は驚いた。
「だって、私だったら夢だとわかっていてもその場にい続けるかもしれません、現実の世界では祐一さんはいないかもしれない――いえ、いない確率のほうが高いんですから」
「――でも、俺は夢の中にいたくないからな、俺は現実の中にいたい」
「私がいなくても、ですか?」
俺は一瞬、躊躇した後。
「ああ、俺はそれでも現実の世界にいきたい」
現実といえば、そういえば、あゆは一体どうなっているのだろう。秋子さんがきたら色々聞いてみたい。そんなことを、俺は思った。
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