I want to shout that you like it.
※第15回ピン題『君が好きだと叫びたい』参加作品です。
※あゆENDを想定していますが、若干異なっている部分があります。
※これらの条件でも構わない人はお読みください。
それは突然だった
「祐一君、明日・・・暇?」
「ん? どうしたんだあゆあゆ」
3限が終わり、放課後になった瞬間に聞かれた
ついでだが、明日は日曜・・・特に用事があるわけでもない
「ボクはあゆあゆじゃないよ!! それで・・・話がそれたけど、明日空いてる?」
「ああ、別に用事も無いが?」
「それじゃあ、一緒に出かけない?」
「? 別にいいけど、どこに?」
俺は質問を質問で返した
あと、言っておくがこういうことはしてはいけないぞ?
「う〜ん・・・考えて無かったよ」
「それじゃあ街中にでも行くか?」
「そうだね・・・うん!! 時間は10時であのベンチでね」
「わかった」
俺はこうしてあゆと街中に行くことを約束した
・・・次の日、何事も無く起きた
「ふあ〜あ・・・」
体を起こして目を擦りながら意識を覚醒させる
「時間は・・・8時、か」
あゆとの待ち合わせは10時、思い出深いあのベンチで、だ
「さて、準備をしてと・・・」
俺は箪笥(たんす)から私服を取り出して着替え、パジャマを手に持ちながら洗面所に行く
「ふう・・・」
蛇口から水を出して顔にかける・・・水が冷たい、意識がはっきりする
その後用意してあったタオルを取り出して顔を拭く
「さっぱりした」
意識が覚醒したのを自覚して居間へと歩いていく
すると美味しそうな匂いがする・・・そう思って居間への扉を開けた
「おはようございます、祐一さん」
「おはようございます、秋子さん」
キッチンで朝食を用意している秋子さんに挨拶する
・・・ん、見慣れた顔が秋子さんのほかに台所にいる?
そう思った俺は台所の方へと歩く
「うぐぅ・・・」
何やら難しい顔をしているあゆがいた
「何しているんだ、あゆ?」
「あ、祐一君。おはよう」
「ああ、おはよう・・・ところで何しているんだ、あゆ?」
俺は思ったことを口にする
「何って・・・え〜と、何でもないよっ!?」
バツの悪そうな顔をして質問をはぐらかすあゆ、怪しいな・・・
「本当に、何をしているんだ? ・・・さては、碁石クッキーをも上回るクッキーでも焼いているのか!?」
「うぐぅ!! そんなんじゃないよ!!」
「じゃあ何をし「祐一さん、朝食はすぐに用意できますから少し待っててくれませんか?」・・・わかりました」
秋子さんにそう言われたので、俺はテレビをつけて暇を潰すことにしよう
「え・・・と、ニュースは」
そう思った俺はリモコンで4チャンネルのボタンを押す
何時もと同じようにニュースがやっていた
・・・大物芸能人の電撃結婚、某政治家のスキャンダル、いつもこんなことばかりを報道してて飽きが来ないのかと思う
まあ、それが仕事なんだろうからしょうがないだろうけど
「祐一さん、ご飯出来ましたよ?」
「あ、はい」
俺は自分の席について秋子さんの朝食を取り始めた
「ふう、ご馳走様でした」
「お粗末さまです」
何事も無く、朝食を取り終えた
「ご馳走様でした」
あゆは俺に続いて食事を取り終えた
自分の使った食器などを集めて台所に運んでおく
ちなみに名雪は未だに眠っている・・・部活も無いのでのんびりしているわけなのだが
「・・・」
あゆは自分の羽根つきリュックに何かを入れている・・・何を入れているのだろうか?
「あゆ、何を入れているんだ?」
「え? 何でもないよっ!」
慌てて俺からリュックを遠ざける・・・都合の悪いものを入れているのか
「それじゃあ祐一君、お先に!!」
そそくさとあゆは場を後にした・・・怪しいな、本当に
「そろそろ行くか」
腕時計を見てそろそろだな、と思う
「祐一さん、出かけるんですか?」
「はい、10時にあゆと待ち合わせをしてるので」
ゆっくりと玄関で靴を履きながらそう答える
「ふふふ、遅れないようにしてくださいね?」
「ええ、わかってます」
デートという言葉は、俺から口にするのは少しばかり恥ずかしいので遠回しで言う
まあ、複雑な気分だが
「それじゃあ、行ってきます」
「はい、頑張ってくださいね?」
秋子さんは笑顔でそう言った・・・恥ずかしい
・・・ゆっくりと待ち合わせの場所に向かって歩いていく
時間は十分余裕がある・・・焦らなくても遅れることは無い
「さてと、どこを回るか考えながら行くか」
街中を歩くといっても、いろんな店が立ち並んでいる
だから、どこに行くかを決めておかないと大変だ
「あゆの性格だったら公園(たいやき)だろ? 映画もホラーは駄目だし、ゲームセンターにも行ってみるか」
流石に何度も意地悪するのは可哀想だし、毎回すると拗ねるからな
「まあ、久しぶりだしな。あゆが楽しめる場所に集中させるか」
最近あまり二人で出かけることが少なかったし
「まだ店は一部だけ、か」
9時45分、開いているお店は数えるほどしかない
日曜だから診療所も開いているわけも無い、静かなものだ・・・
駅にだんだん近づいていくと、人の数が多くなっていく
まあ平日のほうが人は多いけどな
「・・・まだ来てないか」
ベンチを見てもあゆはまだいない
「・・・そろそろ来るだろう」
ベンチに座り、ぼけ〜としながら時間を潰す
こうしてベンチで待っていると名雪と会った時を思い出す
あいつが遅れたせいで寒かったな・・・今思い出すと溜め息が出る
そうしていると10時になった・・・
「祐一君〜」
そう思っているとあゆが走ってきた
「ごめんね、待った?」
「別に、俺も今来たばかりだ」
お約束、といえばそれまでだがお馴染みの言葉を発する
「それで、どこに行く?」
「うぐぅ・・・実は考えてないんだよ」
・・・そうだとは思ったが、まあいいか
「それじゃあ最初はゲームセンターにでも行ってみるか?」
「うん!!」
待ち場所から少し歩いたところにゲームセンターはあった
昔と同じ場所・・・あゆに天使の人形をあげたことを思い出すな
「あゆ、どんなゲームをやってみたい?」
「う〜ん・・・あ、あれは?」
あゆが指差したものはプリクラだった
「プリクラだな」
「プリクラ?」
「簡単に言えば、小さい記念写真を撮るって代物だ」
「ふ〜ん・・・それじゃあ撮ってみようよ」
あゆに服を掴まれてプリクラの前に立つ・・・300円入れて開始する
「背景は・・・どれにする?」
「これかな?」
青く、爽やかなものをあゆは選択した・・・それに設定して
「ほら、撮るぞ」
「う、うん」
結構近づかないと二人で写る事ができないので俺はあゆをぐぐっと引き寄せる
「ゆ、祐一君!」
「ほい、と」
俺はボタンを押して・・・ぱしゃっという音と共に撮影された
そうして遊びまわっていると、12時になった
少し休憩をしたいと思い、俺たちは公園へと足を運んだ
木陰に腰を下ろし、一息を付く
「そろそろ昼食の時間だが、どうするか・・・」
「祐一君、実は・・・」
「うん?」
羽根つきバックから取り出したのは二つの弁当箱だった
「・・・もしかしてこれを作るために台所にいたのか?」
「うん・・・あまり上手くできなかったけど」
箱を開けてみると、見栄えはよかった
「ふ〜ん・・・あゆにしては上手くできたんじゃないのか?」
「ボクにしては、は余計だよ」
頬を膨らませて拗ねるあゆを無視して、俺は箸を使って出し巻き卵を口に入れる
「ふむ・・・美味しいぞ」
「ほんと!?」
「悪くは無い・・・素直に美味いと言ってやろう」
「何で偉そうなのかわからないけど・・・嬉しいよ」
嬉しそうなあゆを見ていると、俺も嬉しくなるな
その後もいろいろと回ってきた
本屋、展望台などいろいろ回ってきたが、最後はここにした
あゆとの思い出深い、ものみの丘の、あの木があった場所に・・・
「久しぶりに来たよね?」
「ああ、もう何ヶ月も来てなかったしな」
あゆはその場所を見渡したり、ぐるぐる回ったりとしていた
・・・今はもう、あの大木は切り倒されて無くなったけど、ここが記念の場所であることは変わらない
あの頃から俺は、どれだけか変われたのであろうか・・・けれど、一つだけ変わらないものがある
それは・・・俺があゆの事が好きだっていう気持ち
「あゆ」
「? 何、祐一君」
俺は、心から思っていた言葉を・・・
「あゆ、俺はお前のことが好きだ! ずっと傍にいてほしい!!」
俺はそう口にしていた・・・気づいてみると恥ずかしかった
誰もいない場所でよかったとつくづく思った
「・・・祐一君」
それを聞いたあゆは顔を真っ赤にしていたが、一息ついた後に
「ボクも祐一君のことが大好きです! ボクをずっと離さないでください!!」
あゆも顔を真っ赤にしながらも、俺にそう叫んでくれた
好きという気持ちを言葉にして伝えるのは難しい
けど一歩踏み出そうと心に決めて、相手に伝えられれば道は変わるだろう
どんなに険しくて、先の見えない道でもそれは同じだ
変わろうとする心と変わらないはずの想いを忘れなければ、人は未来へと歩いていける
未来へ歩もうとするかぎり奇跡は終わらない、きっと続いていくはずだから・・・
Fin
あとがき
え〜、まずは私こと十七式の書いた「I want to shout that you like it」をお読みくださり、誠にありがとうございました。ちなみにタイトルは日本語で今回のお題である「君が好きだと叫びたい」という意味です。正直言うと、難産なお話でした(笑)。いやいや・・・苦労しました。まだまだ新米SS作家で未熟者でありますが、これからもよろしくお願いします。最後にご感想お待ちしています。ではでは〜。
感想
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