……あ、私の番ですね。
えっと、私の話は皆さんのお話のように、幽霊とか超常現象とかが出てこないので、あんまり怖くないかもしれません。
でもこれは、私が高校生のときに本当に起こったことです。当時、私自身が凄く嫌な気持ちになったので、それをお話ししようと思います。
私が高校2年で、3学期の半ばにさしかかろうという頃でした。
朝、新聞を眺めていると、前の晩の遅くに、交通事故が起こったという記事を目にしたんです。注意を惹かれたのは、事故現場が私の住んでいた町だったからでした。一台の小型のワゴン車が道路脇の電柱に追突して、乗っていた人が全員死亡という事故でした。
知っている方もいると思いますけど、私の出身は雪国です。その時期、深夜に路面が凍結するので、こういう事故は、日常茶飯事と言っては言いすぎですが、決して珍しくない出来事ではあるのです。
ワゴン車に乗っていたのは4人。運転をしていた30代後半の女性、助手席にいた中学生くらいの女の子、そして後部座席にいた高校生くらいの女の子と男の子、全員が死んでしまったそうです。
学校に行って判ったことですが、その2人の高校生くらいの子は私と同じ学校の生徒でした。私はその子のことはよく知らなかったのですが、その子の友達が泣きそうな顔で話をしていたのを見て、つらいだろうな、と胸を痛めたことを覚えています。
けれど、その後、警察が事故を調べていくと、色々とおかしなことが判ったんです。
まず、追突時、ワゴン車は時速80kmも出していて、ブレーキをかけた跡もなかったんです。さっきもお話ししたように、この時期は路面が凍結して危険なので、町の中でそんなにスピードを出すなんてありえないはずなんです。
そして、もっとおかしなことですけど、死んだ4人のうち、1人だけ死亡時刻が違っていたんです。運転をしていた女性と、後部座席の2人は追突時に死亡したことがハッキリしているのに、助手席でシートベルトを締めていた女の子だけは、少なくとも、死後、7日経っていて、遺体の腐敗が進んでいたそうなのです。そして、その死因は、餓死、だったんです。
さらに調べてみると、その家の家族は、運転をしていたお母さんと、その娘さんと、甥っ子の3人で、その女の子は家族ではなかったんです。結局その女の子の身元は判らず終いでした。事故のあった晩、その家族は午後7時にレストランに4人で予約を入れていたことがわかりました。けれど、従業員の話によると、レストランに来たのはやっぱり3人だけだったそうです。
レストランを出てからのその家族の足取りもよく判らないんです。事故の時、車の進行方向は、町を出て行く方向だったんです。そんな夜中に町を出るなんて考えられません。それに家の玄関の電気はつけっぱなしだったことから食事を終えたらすぐ帰ってくるはずだったと思われるのです。町を出るにせよ、家に帰るにせよ、レストランを出てから、事故があった時間までが長すぎるんです。いったいその間、家族は何処で何をしていたのか……。
……ああ、ごめんなさい。私が知っているのはこれで全部です。私は喋るのが苦手なので、あまり怖くなかったかもしれませんね。
ちょっと、話しているうちに、思い出して気分が悪くなってきたんで、トイレに行ってきますね。それじゃ、ちょっと失礼します。
感想
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