夢。
夢を見ている。
それは残暑の夜空にゆらめいた気だるい残像。
あいつと、おれと、それからみんなで。
大輪の花が夜空に咲き、ズシンと腹に来る音か響く。
「どんっと鳴ったはっなっびっがっっっうぐ、ぅ〜」
「はいはい、そこまでそこまで」
「もがもが……ど、どうして口押さえるのぉ」
「……まあなんだ、JASRACとかいろいろな」
「気にし過ぎだよ」
そうかもしれない。
「ほら舞、早く早く」
「……いぬさん……」
「この子は犬ではありません」
「……?」
「狐、ですよ」
「わー、私キツネ見るの初めてです」
「人様のペットをじろじろ見るものじゃないわ」
「お、美坂。早く行かないといい場所取れなくなるぜ?」
「そうね……って、北川君は何処へ行くの?」
「ちょっと野暮用。そいじゃまた〜」
「これから見所なのに……ほら、急ぐわよ栞」
「大丈夫ですよ、祐一さん達が確保していてくれますから」
今年の夏もそろそろ終わる。
「ゆういちーっ、スターマイン始まるのよぅ」
この花火大会も残すところ、あと僅か。
「おう、ラストいくつだっけ?」
「3つだよー」
夢。
夢を見ている。
夏の夜のさまざまな夢。
その、フィナーレのはじまり。