わかってしまった。
ボクはもうここにいちゃいけないんだ。
だってボクはもうとっくに―――。

最後に一つだけ。
もう一つだけ。
誰かの、願いを―――。





ひどい激痛。
どこからかはわからないが、自分の体の血が流れ続けている。
熱い。体が熱い。
それは意識が朦朧としていたせいかもしれない。
傷口が熱を持ち、体全体に広がる。
熱い。
それと同時に体温が抜けるような感覚と共に、気分が悪くなっていく。
体から血液が失われていく。

油断していた。
夜の校舎に危険な存在があるとは思っていなかった。
相手の姿は確認できなかった。
まさか自分がこんな事になるだなんて。
私、死ぬのかな。
誕生日プレゼント。
楽しみに。
アリクイのぬいぐるみ。
祐一さん。
ごめんなさい。
舞。
まい。
祐一さん。
……舞を。
舞を、お願いします―――。





舞をお願いします。

それが、彼女の願い。
川澄舞。
彼女を救う。
それが彼女の願い。
強い願い。
他者を想う願い。
自らを省みない、高貴な願い。
それはあの人のような、優しい心。
決めた。

ボクは、彼女を守ろう―――!

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