「次はわたし達ね。名雪、用意は出来てるかしら?」
「あ、ちょっと待って。今シワを伸ばしてるから」
 シワ? 何かおかしな単語が聞こえたと思ったけど、名雪さんは本当に封筒から取り出した紙のシワを伸ばしていた。
 どうも一度クシャクシャに丸められていたものらしい。
 でも、それってプレゼントとしていいんでしょうか?
「名雪、ちょっと貸してみて」
「あ、うん」
 どこから持ってきたのか、秋子さんがアイロンを紙に当てました。
 アイロンとは服のシワを伸ばす道具です。普通、紙のシワを伸ばすのには使いません。
 でも、この親子がそれをやっているのを見ていると、違和感なく見えてくるのは気のせいでしょうか?
「はい、栞ちゃん。これはわたし達からだよ」
 なんて、ただその光景を呆然と見守っていると、名雪さんが笑顔でシワのなくなった紙を差し出していました。
 うう、受け取った瞬間、出来たてホヤホヤなんて言葉が頭に……。




第4位 冬になると何故訳も無く悲しくなるのか……その考察のための一例  あいんさん   63.02 pts






「えっと、どうかな……?」
「どうと言われましても……」
 反応に困ります。虫歯になって祐一さんにお世話になった覚えはありますが、こんなことはありませんでした。
 お姉ちゃんの言動なんかは特に……。
 それに、やっぱり気になるのですが、このシワは何なのでしょう?
「祐一さんの部屋をお掃除してた時に、ゴミ箱の傍に落ちていたんです。読んでみたら面白かったので」
「あ、わたしがちゃんとした紙に写したのも封筒に入れてあるよ」
 祐一さんの部屋に落ちていたということは、これは祐一さんが書いたのでしょうか?
 じっくり眺めてみます。間違いなく祐一さんの字です。
 もっとじっくり眺めてみました。なんだかすごいです。
 全体はハチャメチャなのに、一文一文はとってもユーモラスで面白くて……。
 そういえば、祐一さんがついてきてくれないなら嫌ですとか駄々こねて甘えたかもしれない、なんて思い出してしまいました。
 忘れていたのは、そんな関係が日常になってるからかもしれませんね。


「相沢君……これは一体何かしら?」
「知らん! 俺は何も知らん! ちょっとした気の迷いで……」
「問答無用!」
「ぐはぁっ!?」


 お姉ちゃんの言動がおかしいというのは訂正します。
 祐一さんはお姉ちゃんの隠れた一面を見抜いてたみたいです。


GO NEXT PAGE