◆風のたどり着く場所






 「どうしたの、香里? ぼーっとして? 」
 「えっ? うぅん、なんでもないわよ」
  名雪の言葉で我に帰る。どうやらボーっとしていたらしい。名雪に言われるようだからそうなんだろう。

 「ん? 香里今何か変なこと考えていなかった? 」
 「べつに、なにもないわよ? 」
 「う〜、絶対何か隠してる気がするんだけど……」

 「おーーーい! 香里〜」
  不満を漏らす名雪の言葉を割って、相沢君の声が聞こえてくる。

 「あっ、祐一〜。それにあゆちゃんも」
  その声に反応した名雪が、そう漏らす。
 「全く。そんな大きな声で呼ばないでよね。恥ずかしい……って、きゃっ! なに? 」
  あたしの弁論を聞かないで、相沢君はいきなりあたしの手を掴むなり『こっち、こっち! 』と、だけ叫びながら、あたしを引っ張る。

 「いったい、なんなのよ? 騒々しいわね」
  そう愚痴りながらも、ついて行っている自分がおかしかった。なぜか相沢君の隣を月宮さんも慌てたように急かしている。


  そして、ようやく歩みを止めた相沢君とあゆちゃんが、来た場所は人の居ない中庭の一角だった。
 「いったい、こんな場所に何の、よ…う? 」


  そこで気付く。





  相沢君たちの視線の先に背中を向けている女生徒が一人。




 「あゆが約束したらしいからな」
 「うん! 」

  相沢君と月宮さんが何かを喋っている。















 「一番の夢らしいからな……やっぱり叶えられるなら叶えてやりたかったしな」
 「うぐぅ」
 「なんだよ……あゆ?」
 「ボクだって夢の中で教えてもらってたもん! 」
 「そっか……そうだったけな」
  と、一人納得している相沢君の言葉も聞こえない。










  女生徒がゆっくりと、こちらを振り向く――


















  そして――――――――
















「お姉ちゃん、卒業おめでとう」






感想  home  prev