ある日、彼が貸してくれた青い表紙の文庫本。
枕の下に入れて眠ると、楽しい夢が見られるかもな。
そんな思わせぶりなことを言うから、思わず全部読んでしまった。
* * * − * * *
そして、あたしは夢を見た。
たくさんの小さなお話。楽しかったり、せつなかったり。
そのことを話したら、彼は微笑んで言った。
じゃあ、その夢を案内してくれよ。
いいわよ、とあたしは答えた。
彼はとびっきりの笑顔になって、二人乗りの車に乗ってやってきた。
彼の隣に乗り込んで、あたしたちは走り出す。
どこかから虫の音が響く、晩夏の田舎道を。