落とせない空はない

作者:アルティメット・じぎートミーMark:Nさん   第 2 位(54.60 pts)

KATUOさん (3点)
良くも悪くもおじいさんが怪しすぎる(笑)

散弾銃に関する描写も、話の展開にも、あまり魅力を感じることはできませんでした。すみません。

Foolisさん (7点)
銃を交えた香里と香里の祖父の会話がよかったです。
また、香里と栞が対峙するシーンがよかったです。
あとこの文が好きでした。
>本当はどうするのが一番正しいのか、自分でちゃんと分かっているはずなのに、
>そうすることがどうしてもできない。苦しまないために、悩んで、迷って、そしてそれに苦しむ方法を選んでしまう。
本当にそのとおりですね。

じゅうさん (8点)
会話文と地の文の振り分けが上手かったです。

春日 姫宮さん (9点)
【初読感想】

>散弾銃の銃口を空に向け、流れゆく風を全身で感じる――

 来ましたKanonでバトルモノ。
 触覚に関する表現が凄く優位で、シンパシー(私も触覚とか嗅覚の表現を多用する方なので)。


>「そう言えば香里。何の部活してるんだっけ? わたし、まだ聞いたことないよ」

 名雪は香里の部活知ってるんですけどね(祐一に教えようとしたシーンがある)。
 まあ、この手の作品で原作との祖語を四の五のするのはやめておきましょうか。


>下校する大勢の生徒達の中で決して目立たない小さな背中。なのにそれは何よりも明確な存在として、一瞬のうちに私の意識を捉えてしまった。……きっとあの子が、こんな場所で私服なんて着ているせいだ。

 バトルモノかと思いきや、普通にクレー射撃をテーマにするのかな。ここに栞がどう絡むのか楽しみ。


>「そう、私には、この誇り高い銃を撃つ資格がないのだよ」

 この辺が後に関わって来るのかな。


>「これから一緒に帰りましょう。そして途中で百花屋に寄りましょう」

 普段の(祐一に対する)名雪らしくない言い方で、ちょっと面白いなと思いました。


>近づきすぎると全部がちゃんとは見えなくなってしまうでしょう? 本当に見てほしいところ、そして見なきゃいけないところが、見えなくなってたんだ。

 この作品は栞シナリオの裏話を描いたものかな。こうやって香里と栞和解の伏線を張ってるように思う。
 個人的には、名雪は祐一の気を引く努力はしてない(ていうか自分の恋心にも気付いてない)と思うんですけどね−。
 高校生にもなって確実に化粧とかしてないし。お寝坊さんだからする時間もないし(笑)。


>上下二連式散弾銃。寄り添うように並んだ二つの銃身を、その時私は『君達のようだ』と言った。まるで生まれる前からそうであったように、君達はいつも一緒にいて、離れることがなかったからね。

 これは上手い。銃設定をこうつなげますか。
 掃除してなかったのは、そこから目を背けてたということですね。


>知り合いに美味いカステラを貰ったんだ。

 実は秋子さんと共通の知り合いだったりして(笑)。
 原作で秋子さんがカステラを出すシーンがあるので。


>「正しき心を持ち、正しき行いをする限りにおいて、法は意味を持たないのだ。そして私は君を信頼しているよ、香里」

 なんつー元警視総監だ(笑)。
 戦前の教育を受けた人間でしょうから、まああり得るのかもしれませんが。


>夢とか希望とか奇跡とか、そういう曖昧なものではない、現実という確かな存在の中で、どれだけ手を伸ばしても届かない空のような、自分の力の及ばないそれ。もどかしいほど近くにあるのに、決して思い通りにならない、自分の内にある心。
 それはもう本当に、どうしようもないじゃないか。

 この辺はKanonの本当のテーマにも繋がっていますね。
 奇跡はあくまでハッピーエンドのための材料で、それなしで祐一はちゃんと自分の心を選び取ってるところが。


>「――だから、いっそあたしが殺してあげる。あなたを、この手で」

 ええええっ。


>もう空を見上げる必要はないんだと思った。だって、すぐそこにあるのだから。私が見つめるべきものは、求めていたものは、まるで空から落ちてきたみたいに、この手の届くところにある。

 空=運命的なもの。でも、運命が絶対的なものに見えたとしても、目標を見定めることはできる、と言ったところでしょうか。
 ただ、元がKanonなのでここはしかたないところかもしれませんが、栞が生きてる状態でそれを言われるとどうにも説得力に欠けるんですよね。
 ポイントになるのは栞がもう絶対に助からない、と思っている状態で香里が自分の心を選び取るところにあるのですから、そこを中心に持ってきて(むしろ栞は殺してもいいくらい)、得られたものを描くくらいで良かったのではないでしょうか。


【改めてこの作品を振り返って】

 ……と、初読時は思いましたが、この作品の空気自体が結構軽い感じだったので、敢えて絶望を強調する必要はなかったのかもしれません。
 とはいえ、銃を香里に手渡して、あまつさえその銃身を妹に向けるのはやりすぎ。あなたを見てるのよ、という意味なんでしょうけど。
 終盤は無理に落とそうとして展開が飛んでしまった感じがあります。
 それから、これも難しいお願いかもしれませんが、空と人をテーマにするなら、それを媒介するもの=雪についての言及も欲しかったな、と思いました。
 現状だと、Kanonの奇跡といった要素から香里が遠すぎますし、あまり雪国っぽさも感じられませんので。
 色々と考えさせられるだけの魅力があったのでこの点数です。

mkrさん (7点)
こういう文章表現は好みです。
展開は、ちょっと力業のような雰囲気が。
それで治っちゃったことにすると、爺さんが弱くなるのでは?
好みなのですが、根本の所で、少し整理が付かない感じがしました。

--さん (5点)
香里と銃ってとても似合うと思うのですよ。
破壊衝動とか、たぶんそれを実際に破壊に使えないだろうところとか、音だけの虚しいものであるところとか。
だから、この組み合わせはいいなあと思ったのです。

PFRさん (6点)
 タイトルからしてどう考えても内部犯の犯行。
 突飛な設定を導入している割にSSそのものは突飛にならずに真面目な出来だな、という印象です。そしてそれは一概に良いこととは言えないと思います。まず美坂家にこんな「お爺様」がいるという設定はあまり褒められたものではない、と言いますか、正直に言えばある種の痛さを感じますが、その痛さを吹き飛ばしてくれる豪快な展開などは見られないので普通に痛いまま終わっている感がありました。銃というモチーフについても似たようなことが言えて、香里がクレー射撃をやっているという変な設定を導入することで達成されている表現があるかと言えばあんまりなかった。作者の趣味以上のものを感じることができなかった。まあその趣味の部分もベンチレーテッドリブがお気に入りだのゼロインする描写を律儀に入れるだのといった妙にマニアックな姿勢が個人的には面白いとは言えるのですが、小説としてちゃんと評価できるのは上下二連式から美坂姉妹が連想されて、栞を受け入れることと二の矢が当たるようになることが連関している点くらいかなあと思います。贅肉になってしまっている部分の方が圧倒的に多いと思いました。
 総じて普通の美坂姉妹SSという感じ。美坂姉妹SSとして高水準を保っている、とは勿論言える訳ですが、それならばお爺様もクレー射撃もないほうがバランスが取れる。お爺様とクレー射撃を残すのであればもう少し弾けた筆致が欲しかった、と思います。

匿名希望(26、リーマン)さん (3点)
 中盤くらいまでは説明が多くて、ちょっぴり退屈でした。正直なところ、香里の心理の流れを邪魔しているような気もしました。
 姉妹に関する部分に対して、銃とクレー射撃に関する描写が多いかなあ、と。
 姉妹が和解する場面が眼目だと思うんですが、台詞がドラマチックすぎる印象がありました。ちょっとクサい(笑)。

 そうそう、最後の一行が祐一と栞を撃ち殺したように思えてしまって困った(笑)。


> 私は右手を銃の形に。向けられた人差し指に目をしばたたかせる名雪。
> そんな彼女にくすりと笑い、
>
>「秘密よ」
>
> 右手の銃で"Bang!"をした。

すごく…70年代です…。

復路鵜さん (5点)
 なかなか珍しいようなSSを見た気がします。射撃! 射撃!
 お爺様の回想あたりはどこにでもありそう、というより「よくある」話しぶりのように見えたので、若干退屈に感じられました。
 しかし栞との和解はうまくかけていたと思います。
 

えりくらさん (6点)
香里がクレー射撃というのも、なんとも似合うなぁと思いました。普通に撃ち殺されてしまいそうな気がする。ラストの方の展開はちょっと刺激的ではあったけど、その分どこか意図的なものが透けて見えてしまって少し上滑りしていた印象がありました。その点が少し残念。とはいえ、よく練られた面白い話だったと思います。

神代 悠さん (7点)
文章技術、ストーリーとも今回作品の中では頭一つ抜けているように感じました。
恐らく名のある方なのではないかなと。
ライフル競技に関する言及がリアル(に素人としては思える)で、こういう作品の細部にリアリティを感じられる作品の書き方は大好きです。



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